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増える空き家 国の対策は?

増える空き家
国の対策は?
北住都・住宅政策講演会より

このところ住宅を取り巻く課題としては、2050年カーボンニュートラルへ向けた省エネ性の向上に目が行きがちだが、避けて通れないもう一つの課題に挙げられるのが『空き家の発生抑制』。全国・道内ともに、別荘や賃貸・売却用住宅を除いた、いわゆる“居住を目的としていない空き家”の数は増加の一途を辿っており、地域の住環境にも悪影響を及ぼしかねない。この課題に国はどう対応するのか。

去る2月18日に(一社)北海道住宅都市開発協会(高山壽雄理事長、コスモ建設㈱会長)が道と札幌市との共催で行った住宅政策講演会で、空き家の現状と今後の国の対策について語った国土交通省・塩見英之住宅局長の講演要旨を紹介する。

#北海道住宅新聞2023年3月5日号より転載

誰も住まない空き家
全国349万戸、道内15.7万戸
道内は旧産炭地や森・八雲などで目立つ

ひとくちに空き家と言っても、いろんな種類の空き家がある。人が住んでいない住宅はすべて空き家だが、入居待ちの賃貸住宅や販売中の住宅、別荘なども統計上は空き家と見なされる。


それら入居待ちの賃貸住宅や販売中の住宅などの空き家は適正な管理が期待できるが、誰も住んでいなくて、特に使われてもいない空き家=「居住目的のない空き家」は、適正な管理が行われない可能性が非常に高い。わざわざ管理してもインセンティブがないからだ。


この「居住目的のない空き家」は、今後行政にとって非常に重荷になってくる可能性が高い。直近の2018年住宅・土地統計調査によると、全国で349万戸、北海道では15.7万戸ある。住宅ストック全体に占める割合は、全国・北海道ともに5.6%。国交省としては、この割合を今後も引き続き注視していきたい。

「居住目的のない空き家」の現状を見ると、全国では戸建てが7割を超えている。また、腐朽などで壊れている恐れがあるものも戸建て・共同あわせて100万戸ある。このほかの約250万戸は必ずしも傷んでいない状態で、多少の修理が必要かもしれないが、有効に活用することができれば、地域の活性化に大きく寄与する可能性が十分ある。


一方、北海道の「居住目的のない空き家」は戸建てが6割弱で、共同住宅が3割強。全国と比べると戸建てが少なくなり、共同住宅が多くなっている。壊れている恐れのある住宅は戸建て・共同合わせて5万戸弱。全体の大体3分の1は傷んでいるが、3分の2は使いこなせる可能性が十分あると考えていい。
 住宅ストック全体に占める「居住目的のない空き家」の割合を見ると、全国・北海道とも5.6%だが、都道府県別に見ると大都市圏の割合は低く、西日本の鹿児島、高知、和歌山がトップ3で10%を超えている。


北海道で統計可能な市区町村の割合を見ると、札幌の割合は比較的低いが、夕張や赤平、芦別、歌志内、森、八雲あたりは10%を超えてかなり高めとなるなど、かなり地域差がある。

今後の国の対策
発生抑制・活用・管理・除却等が柱

今後の空き家対策としては、まだ法案の閣議決定もできていない段階だが、方向性は社会資本整備審議会の空き家対策小委員会の中で議論・整理しており、①発生の抑制②活用の促進③適切な管理・除却の促進④NPOや社団法人、コミュニテイなどが行う準行政的な立場での活動促進—という4つの柱で整備する。


①発生の抑制は、所有者が生きているうちに住まいを今後どうするのかを家族で話してもらう。そして亡くなられた後、引き継ぐ方が自分で住むのか、管理するのかということをできるだけ早く判断してもらう“住まいの終活”を推進していきたい。


②活用の促進では、新築・中古住宅購入で家を担保にお金を借り、生きている間は利息だけを払い、元本は亡くなったときに家を売却して返済に充てるリバースモーゲージの活用を周知。家の所有者が死亡した時は担保物件として売却することにより、第三者による新たな活用が可能なストックに変わるきっかけになる。これも空き家対策として有効な手法だ。


また、相続のときにできるだけ空き家にならないよう、早い段階での活用を考えてもらう働きかけをしていきたい。空き家を早く譲渡した場合には、税制優遇についても制度の延長・拡充も図っていく。さらに、空き家の活用を一定の地域で重点的に行うことを進めてはどうかと考えている。特定の地域での空き家を重点的に活用する事例を作り、観光客の呼び込みや、地域の活性化につなげるストーリーを描くことが狙いだ。その際、規制がネックになっているというケースもあると思うので、建築基準法、都市計画法など規制の合理化もできないか検討している。

行政の管理・除却勧告で
減税の対象外になることも

③適切な管理・除却の推進は、まず相当状態が悪く、そのまま放置すると周りに悪影響を及ぼすような“特定空き家”となる恐れがある建物の所有者に対して管理を促す。状態が悪くなってからではなく、悪くなる前の早い段階で勧告などができる仕組みができないかと考えている。管理がきちんと行われずに行政から勧告を受けてしまう場合は、住宅用地について適用されている固定資産税軽減措置などの対象から外していくことも、検討していかなければならない。

そのほか、市区町村が財産管理制度を使いやすくなる仕組みも考えたい。所有者がなかなか管理を行わない場合、裁判所が選んだ管理人が所有者に代わって空き家の管理を行い、場合によっては売却処分できる仕組みを、市区町村主導でできるよう整えたい。


④NPOや社団法人、コミュニテイなどが行う準行政的な立場での活動促進は、民間のNPOあるいは社団法人などが準行政的な立場で空き家対策に関する活動ができる新しい制度をつくる。例えばマンパワーが足りない市区町村に代わり、所有者の同意を得て空き家の情報を不動産業界に提供することで、利活用を図ることができるのではないか。

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栗原

北海道住宅新聞社webメディア局マネジャー。札幌生まれ・浦河・旭川・北見育ち。編集プロダクションのライター・編集者を経て2008年に北海道住宅新聞社入社。各クライアントの魅力・特長を踏まえ、結果につながる記事、写真、サイト、動画、SNS、NET広告を展開するのが得意です。

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