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大工の減少が止まらない

もはや危機的状況か?

大工の減少が止まらない

住宅業界では大工不足が叫ばれるようになって久しく、大工の減少と高齢化はいまだ止まる気配はない。それどころかより深刻化しつつあると言っていい。特に中堅クラスである30代の大工と、職長クラスである40代後半〜60代の大工が急速に減少している。

※北海道住宅新聞2023年4月15日号より転載

20年間で大工は半分以下に
全国29万8千人、道内1万4千人-2020国勢調査結果

「いろんな手を尽くして求人をかけても応募がない」「若い人がなかなか入ってこない」「年齢的にこのまま続けさせていいのか不安がある」—。


 これはもうだいぶ前から聞こえてきていた大工不足にまつわる話。ほとんどの住宅会社は大工が足りなくなってきていることをわかってはいたが、現在に至るまで有効な対策は国も業界もなかなか打つことができず、一部の住宅会社や業界団体が、大工の育成・研修システムの導入や社員雇用による生活の安定・保障に取り組んでいるくらいだった。


 しかし、「まだ大丈夫」と問題を先送りにしたままでは、取り返しがつかないほど大工の減少は加速している。


 総務省が5年おきに行っている国勢調査を見ると、直近の2020年調査における大工の就業者数(雇用者・役員・パート・アルバイト等含む)は全国で29万7900人。2015年調査比で16%減少し30万人を割り込んだ。北海道も1万4060人で同比15%減と、減少に歯止めがかからない。高齢化も進み、平均年齢は全国が54.2歳で同比2.6歳上昇、北海道は55.1歳で同比2.5歳上昇となっている。

年齢構成比では30代が大幅減

全国・北海道ともに2000年からの20年間で大工の人数は55%前後の減少と半分以下になったが、その中でも特に目を引くのが大工としての技能をひと通り習得し、中堅クラスとして現場の主戦力となることが期待される30代の減少だ。


 昨年末に発表された2020年調査の詳細集計で30代の大工就業者数は、全国で3万2000人弱、2015年調査比41%減、北海道では1400人弱、同比47%減と、年代別では最も大きく減少している。北海道では30〜34歳に限ると同比62%減と5年前より大幅に減少している。


 北海道で30代の大工がいなくなっていることについては、転職しても十分に新しい仕事のキャリアを形成できる年齢であるほか、結婚し家庭を持つ時期ということもあって、改めて将来のことを考え離職を選ぶ可能性もある。そのほかにも、4年前に大工の社員雇用化に踏み切った須藤建設㈱(本社伊達市)の大工担当役員・深瀬正人専務は、「現在30代の大工が入職した10〜20代当時の親方は、おそらく下請け叩きなどで大変な時代を送っていたはず。厳しい状況を目の当たりにし、思うように給料も上がらず、待遇も良くなかったほか、休みもなくきついということで、1人辞め、2人辞め…となっていったのかもしれない」と推測する。

職長クラスの離職も問題

このように大工の減少が加速し続けている中で、問題となっているのは30代の大工減少だけではない。職長クラスで働き盛りとなる年代の大工の離職が進んでいることも問題だ。


 2020年と2015年の大工就業者数を5年単位で集計し、年齢層別に2015年の大工就業者数が5年後にどう変わっているかを調べたところ、全国は30歳以上のすべての年齢層で減少。北海道も25歳以上は55〜59歳を除き減少していたが、特に目を引くのが40代後半〜60代の減少。全国は44歳以下の年齢層こそ増加または10%未満の減少だが、45〜49歳は10%減、55〜59歳は15%減、65〜69歳は24%減など、離職が目立つ。


 北海道も55〜64歳は大く変わっていないが、40〜44歳は10%減、45〜49歳は12%減、50〜54歳は16%減、65〜69歳は18%減となっている。


 なお、全国・北海道ともに70歳以上の年齢層は30〜70%台の減少だが、年齢的には大工を引退してもおかしくないことから、減少率としては大きくても、自然減の範囲内ととらえられる。

生活面・体力面の不安が影響か
30代前半は将来を改めて考える時期に

40〜60代の大工の減少・離職が目立つ理由として、(一社)北海道ビルダーズ協会の大工育成委員長で、大工の社員雇用や若手育成に力を入れてきた㈱丸三ホクシン建設(石狩市)の首藤一弘社長は、「一般的に50代くらいの大工は転職するのは難しいが、30年仕事を続けてきて子供も独立し、夫婦2人になった時に、今まで通りに現場仕事を続けていくことに対する体力的な不安もあり、子育てが終わったのだから収入が少なくなっても転職したほうがいいと考える人も多いのでは」と言う。


 また、「体力が落ちてきても、後輩を育てる仕組みが整っていれば指導者として大工を続けていけると思うが、若い人はなかなか大工の道に入ってこない。それも大工を続けるうえでの不安要素になっていると考えられる」と、若者のなり手不足が間接的に影響している可能性も指摘する。

社員雇用による待遇改善と
将来の選択肢拡充を

このような状況に対し、住宅会社はどんな手を打てばいいのか。大切なのは不安の解消、それも生活面での不安と体力面での不安の両方を解消してあげることが必要だ。


 生活面の不安解消としては、大工の待遇改善がある。社員として雇用し、社会保険もちゃんとかける。いわば大工のサラリーマン化だ。例えば20代後半〜30代前半で家庭を持った時、社会保障をきちんと受けられないと、一家の大黒柱として家族を守れるかという不安も出てくる。その不安を解消してあげることが、30代になった大工の減少を止めることにもなる。


 体力面での不安解消としては、大工が将来的に体力の限界を感じた時に、キャリアを活かしたいろんな仕事を選べる環境を用意しておくことがポイントになる。


 例えば、体力の低下や病気・ケガで現場仕事を行うことが難しくなった時、後進を育成する指導者や、工場・作業場での加工専門職などに比重を移して仕事を続ける選択肢を会社として示しておくことができれば、大工を辞めることもないはずだ。


 丸三ホクシン建設・首藤社長は「ここ30〜40年の間に、大工の待遇改善が進まないのは当たり前のようになってしまっているが、そこにしっかり手だてを講じられる住宅会社が将来生き残っていくことができるだろう」と語っている。

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子どもの頃に「大工さんってカッコいい」「大人になったら大工さんになりたい」と思ったとしても、高校の先生、またはご両親から「大工の世界は先輩が優しく教えてくれないぞ」「収入が安定しないぞ」「危険が伴うぞ」といったことを言われ、素直な若者は、あっさり諦めてしまうという話をよく聞きます。


大工さんの世界も、30年前とは違い、先輩が後輩に優しく教える、残業も減り、週末はしっかり休める、電動工具やプレカット材の普及もあり、作業効率も劇的に改善されている、といった変化もあります。そういった変化を学校の先生やご両親はご存じない、ということもあります。また工務店・ハウスメーカーによっても若手大工の育成方針、環境も違います。しっかり良い住宅会社を見極めることも必要になります。新築・リフォームともに施工を担う大工さんはもはや貴重な存在なので、仕事はたくさんある時代になりつつあります。

一昔前と違って、住宅建設現場が、仮設養生に覆われ、道行く人から、大工さんたちのカッコいい仕事ぶりが見えなくなり、聞こえるのは音だけ・・・これでは大工さんに憧れる人も少なくなるのは当然かもしれません。

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    栗原

    北海道住宅新聞社webメディア局マネジャー。札幌生まれ・浦河・旭川・北見育ち。編集プロダクションのライター・編集者を経て2008年に北海道住宅新聞社入社。各クライアントの魅力・特長を踏まえ、結果につながる記事、写真、サイト、動画、SNS、NET広告を展開するのが得意です。

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